眠くなる珈琲

  先週土曜日に万博に行く予定でした。しかし朝から生憎の雨でしたので日曜日に変更しました。日曜日の朝も、どんよりとした空模様で、この季節だというのに、肌寒かった。傘を持って行くのも嫌だし、もし、雨が降ったら、なお更面倒なので、万博は取り止めて、人民公園へ出かけた。するとどうでしょう、人民公園地下街の人出がいつもより少ないのです。まさか、みんな万博に行ったのではあるまいしと思いましたが、この日、万博には36万人もの入場者があり、最高の入場を記録したらしい。又、この日は希拉里·黛安·罗紱姆·克林顿(ヒラリー・クリントン)が上海を訪問し、万博会場を参観した。何でも、上海訪問前には、日本で鳩ポッポと会見し、3時間で切り上げたが、中国には5日間も滞在するらしい。このアマ、随分ふざけたことを、しやがる、完全に日本をなめている。現政権では、かくもあって、然るべき とは思う。それより回击(しっぺ返し)が怖い。酷国(アメリカ)は必ず、やる。

 人民公園の地下街に、いつもの揚州小籠包を食べにいくと、値上がりしていて、9元になっていた。しかし、値上がりしたとは言え、この美味さには充分に納得できる価格だ。小籠包を食べ終わり、いつもの咖啡馆に行く。(←コーヒーは日本では珈琲と書く)

そして、いつもの場所に座る。いつも服務員は、心得たもので、メニューを持って来ない。私は一言“老样子”いつもので・・・) 服務員は紙おしぼりを置いて、カウンター内に消えた。暫くすると、いつもの浓咖啡(エスプレッソ・コーヒー)と芝士蛋糕(チーズケーキ)のセットが運ばれてきた。服務員は二人いるが、二人とも、恐龙(ブス)で、いつも板脸(仏頂面)だ。

 まづ先に、エスプレッソをほんの少し口に含む、いつもの香りだ(偶にハズレる)。そして、さっき買った矿泉水(ミネラル・ウォーター)を一口飲む。口から息を吸い込み鼻から吐き出し、コーヒーの残り香を楽しむ。徐にチーズケーキを一口。ここのチーズケーキは冷凍モノを解凍して使っているが、私は完全に解けなくて、冷たさが残り、小さな氷の粒が歯にあたる位のが好きだ。今日はギリギリでセーフ。

実はエスプレッソは万博と大いに関係がある。1906年 ミラノ万博で出品されたのが起源とされる。私が初めてエスプレッソと出合ったのは、まだ仕事をしていた時に偶然に入ったイタリアン・レストランだ。その香りの高さに魅せられ、家庭用のエスプレッソ・マシーンを購入したが、蒸気圧が上がらない為か、エスプレッソ本来の美味さのクレマ(泡)が立たない。今 マシーンは倉庫で眠っている。 ローマで飲んだエスプレッソは気絶するくらい美味かった。それは、一般的なエスプレッソのもっと濃いもので、リストレットと呼ばれる。舌先に一滴のリストレットをのせるだけで、強烈な香りが鼻腔を突き抜けた。それ以来、リストレットには出会ったことがない。

 私はエスプレッソの苦味とジェラートの甘さを交互に口に楽しむのが好きだ。この咖啡馆前にある看板はジェラートではなく、チーズケーキだったが、吸い寄せられる様に店内に入った。あまり期待はしていなかったが、良いほうへの期待はずれで、それ以来、毎週の様に通い、回头客(常連客)になり、これしか注文しない。服務員をその事をよく心得ている。

この咖啡馆の付近は1930年代の上海の風情を残す通りとして、運営されているらしいが、時間が経って、初期の意向がうすれたのか、総合的なプロデュースがされていないのか全く統一感がない。

そして、この咖啡馆も同じで、内装や調度品も頑張っているところもあるが、何やら野暮ったく、いつも客はいない。そんな雰囲気がかえって、私を落ち着かせるのかも知れない。だからエスプレッソとチーズケーキを食べ終わると、いつも妙に眠くなる。この日も30分位の午睡(昼寝)をした。目覚めると海莉·韦斯顿(Hayley Westenra)の《奇异恩典》(Amazing Grace)が流れていた。いつもならここで「龍井茶」を注文するのだが、この日は图书城(本屋)ともう一軒行く用があったので、咖啡馆を出た。