“君子报仇,十年不晚”

 何年か前に、台北の鼎泰豐(ニューヨークタイム紙が選んだ世界10大レストランのひとつ)へ小籠包を食べに行った。店の壁に灌汤包(guàn tāng bāo)の宣伝ポスターがありました。小いさな蒸籠に一杯に膨れ上がり、湯気が立っている灌汤包の写真に魅せられ、注文しましたが、予約が必要とのことで、食べることが出来ませんでした。予約が必要と言う事はきっと美味いのだろう。いつか食べてみたいと思っていました。

 翌年、桂林からの帰りに上海の、豫园商城老城隍庙でそれを見つけ、外卖(お持ち帰り)の灌汤包を買いました。ストローから一口啜っただけで、それ以上は口に入ってきません。良く見ると、ビニール製のストローがスープ熱で縮んでしまっていました。ストローを交換してもらい、啜ろうとしたとき、ストローが灌汤包の皮の底を破り、スープは全部、私の上着とズボンが吸い込んでしまいました。兎に角、この灌汤包には怨みがある。

 今回、呉江路にある店で菜単(メニュー)に見つけました。

 “君子报仇,十年不晚”
(君子の仇討ちは十年でも待てる)と怨念を込めて注文しました。

灌汤包が運ばれてきました。

  やぁ、やぁ、めずらしや、なんじは湯包のなにがしよな、今をさること三年前、わが前より立ち退きし大悪人、その怨みをはらさんため、この年月の艱難辛苦はいかばかり、雨に打たれ風にさらされ、一日千秋の思いにて尋ね尋ねし甲斐あって、いまこのところに出逢いしは、盲亀の浮木優曇華の、花待ち得たる今日只今、いざ尋常に、勝負、勝負・・


  ところが、美味いには美味いのですが、その時同時に注文した松茸のスープの方がもっと美味いので、灌汤包の影薄しで返り討ちに逢った気分でした。

小籠4ヶ、湯包1ヶ、松茸スープ1ヶ 上海焼きソバ1ヶ、ビール2本で、135元

それにスープを吸い取った後の灌汤包は老婆の乳房にも似ていて、それ以上手をつける気にはなりませんでした。

    おもしろうてやがて悲しき湯包哉   不精(者)

        お粗末 orz orz