世博会——纸老虎

 
 開幕日 改札ゲートを出ると直ぐに、会場案内の地図を配布していた。ごく普通の紙で作られた一般的な地図でした。(愛知万博では、防水紙を使用)

 事前にインターネットで各国のパビリオンの配置は調べてはあったが、観覧の予定は立ててはいなかった。真直ぐ東に向かって歩いて行くと「美国」と赤く書かれた文字が目に飛び込んできた。「美国」とはアメリカのこと。アメリカを漢字で表現するとき「亜米利加」や「亜美利加」と書き、中国は後者の2文字目の「美」、日本は、前者の2文字目を採って「米国」となったらしい。しかし、「美国」とは随分ヨイショした表現だ。世界の至るとこで戦争に介入するこの国には「酷国」の方がふさわしい。

(中国の若者の間ではこの「酷」を本来の意味とは逆に「かっこいい」の意味で使われている。中国語の酷の発音が英語の「cool」に似ているからだ。日本の若者言葉の「やばい」も本来の意味とは反対に使われているので、本当にヤバイ)

  美国館を通り過ぎようとした時、今日は予約券がいらないとのアナウンスが聞こえたので、とりあえず、列に並んだ。後方へ行列はだんだん伸びるが、一向に前進しない、入場は未だ出来ない様子。どうやら開館式を行うらしい。暫くして、美国館長のスピーチがはじまった。なんと流暢な中国語を話すではないか、その上最後には上海語で、ありがとうと言って挨拶を締めた時、一斉に歓声があがった。

 入場口には数箇所に地下鉄等に見られる自動改札機が設置されていて、それを通り入館する。館内に入るとホール上方数箇所に巨大スクリーンが設置されていて、アメリカの風景が写しだされた。次に様々な職業の人が中国語でのあいさつ「ニーハオ」を覚えていく様がカットバックされ、最初にうまく出来なかった人が、少しづつ出来るようになっていく場面が面白い。

 シアターに通され、それぞれ席につくが、席が半分くらいしか埋まってない。私は入場口の自動改札機で入場人数をカウントしているものと思っていたのだが、未だ稼動していないのかも知れない。ここには3面の巨大スクリーンが設置されていて、プログラムが始まった。

 子供たちが絵を描いている映像が流れ、次に中央スクリーン一杯にヒラリー・ロゥダム・クリントンが現れる。スクリーン下部には中国語に翻訳した字幕が流れる。ヒラリーは私と同年生まれの今年63歳のはずだ。63歳のババーの大写しは耐え難い、勘弁してほしい。ファースト・レディーだった頃と比べ国務長官就任後の顔つきは全然違う。職務柄なのか、この眼つきは絶対に何かを企んでいる。それにこのデカイ鼻をみていると、白雪姫のまま母を想像した。

 田中角栄はアメリカから毒ピーナッツを貰って失脚した。早く、ヒラリー婆さんに日本へ毒リンゴを持って来てほしいところだ。いや、ルーピー鳩ポッポには毒豆が良いかもしれない。 それにしても、普天間問題で、アメリカの出方が、いやに大人しいのが気になる。放って置いても現政権が自爆するのが、判っているかのようだ。ルーピーの言動は既に毒豆を食わされ意識朦朧状態としか思えない。

 次にオバマ大統領のリップサービス。私の後ろにいた中国人が「こんなこと言うから中国人は勘違いするのだ」と言っていた。
中国ネット上ではオバマのことを「小黒」と呼んでいる。異民族を蔑視する中華思想は今なお変わっていない。

 次に別のシアターに移動。ここもマルチスクリーンが設置してあった。椅子は一人がけではなく、長ベンチ・スタイルで、良く見ると裏に振動装置が設置してあった。映像の雷鳴のシーンで、椅子が震動、雨のシーンで水滴が降ってくる、いつものパターンだ。

 次の場所には、アメリカ人の健康への取り組みが紹介されていた。全身スキャンのレプリカ的な装置があった。中国人が質問しても、館員は簡単な中国語を話すことが出来ても、それを説明出来なかった。愛知万博では日本人以上の日本語(?)を話すアメリカ人がいた。


最後場所はみやげもの売り場で、特にアメリカ的なものはなかった。

 今回のアメリカ館の展示には何も新規性のあるものはなかった。大阪万博では「月の石」が展示され、今もって脳裏に浮かんでくる。愛知万博では「セグウェイ」やライト兄弟の発明した飛行機のレプリカ等、現物を見たり、触れることが出来て、印象に残っているが、今回の展示は、あと3日もすれば完全に忘れると思う。

 この日は他にカナダ館、中南米共同館、ルーマニア館、中国省区連合館、日本館、ベトナム館、ネパール館を見た。
大体の展示館が、画像による紹介で、出来るだけ費用を押さえようとしているのが見え見えの中、中国省区連合館は一番良かった。これは、私が中国にいるから気をつかった訳ではない。各省の特産品や、観光地、中国少数民族の服装や民族舞踊が楽しめ、多くの情報を得ることが出来た。浙江馆は映像表現も凝っていて、最後には龍井茶のサービスがあり、茶杯は記念品にと持ち帰ることが出来た。人々に知識や感動を与え、驚愕を覚えさえるのが万博と思う。しかし中国省区連合館を除いては 唖然、愕然、失望の展示内容であった。

 中国は国力を挙げて万博を成功させようとしているが、諸外国はリーマン・ショックの影響で一時期は参加も危ぶまれた。参加するには参加したが、出来るだけ経費を抑えようとしていて、外観だけを立派にして、中身のない「張子の虎」のになってしまった。おりしも今年は寅年、“纸虎的世博会” とは相応しいではないか。